lounge Ö
Site: 東京都
Architect: 芦沢啓治建築設計事務所
Project architect: 芦沢啓治 / 武藤誠 / ダニエラ・ボッリ
施工: 株式会社スペース
Design Collaboration: SPACEMAN / Stuart Taylor
Projectmanagement:株式会社TamSA
Client: 三菱地所株式会社 / 三菱地所プロパティマネジメント株式会社
Planning & Operations:メディアサーフコミュニケーションズ株式会社
Furniture: KARIMOKU CASE / 石巻工房 / ARIAKE
Lighting Planning: Modulex
Custom Lighting: 斎藤照明
Interior Styling: 中田由美
Photo: 見学友宙
lounge Öは、大手町・丸の内・有楽町エリア全体をひとつのワークプレイスとして捉え、多様な働き方や人々の交流を支える三菱地所の取り組みの一環として、新国際ビルに計画された就業者のためのラウンジである。
築60年を超える新国際ビルには、長い時間の中で培われてきた建築の力強さがある。このプロジェクトでは、既存のファサードとスケルトンが持つインダストリアルな雰囲気を活かしながら、そこに人が長く過ごすための温かさや居心地、ホスピタリティを加えることを考えた。
同時に、街とラウンジとの関係も重要なテーマとした。既存のファサードを残しながら、そこから見える内部を整えることで、会員制の施設であっても街に対して閉じることなく、その活動や雰囲気が外へと伝わる場所を目指した。街角から大きく見える既存の階段も、空間の裏側とせず、ラウンジの一部としてデザインしている。ファサード越しに見える内部には、居心地のよいカフェのような親しみやすさを持たせながら、街の風景に新たな質を加えるような佇まいを意識した。
ファサードのグリーンは、工場や工作機械などに見られる工業的な色彩から着想した。有楽町に多く見られる赤褐色の御影石との対比とともに、これから生まれ変わっていく街並みに、変化の兆しとなる色として選んでいる。
内部の計画は、クライアントである三菱地所、運営に関わるメディアサーフとともに、この場所に何が必要なのかを検討しながら進めた。働く、休む、話す、集まる、読む、食べる。それぞれを明確に分けるのではなく、異なる居心地が緩やかにつながり、その時々に応じて過ごし方を選べる環境としている。
メインエントランスの正面には本棚とハイテーブル、空間の中心にはパンチングメタルでつくられたキオスク「Baiten」と低いソファを配置した。そのほか、集中して仕事のできるデスクや、カーテンで緩やかに仕切られるラウンジなどを設けている。壁で機能を分けるのではなく、家具の高さや素材、光を変えることで、一つの空間の中に異なるスケールと居心地をつくった。
ラウンジを特徴づけるコの字型の本棚は、ブックエクスチェンジのためのライブラリーでもある。3か月ごとに選書が入れ替わり、新しい本が加わるとともに、利用者による本の交換によって本棚そのものも時間とともに変化していく。本を介して、普段出会うことのない知識や人との偶然の接点が生まれることも、この場所の役割のひとつである。
「Baiten」は、このプロジェクトのために新たにデザインしたキオスクである。食事や飲み物に加え文具なども購入でき、この場所での多様な活動を支えている。共通のモジュールを基本に、設置場所や用途に応じて素材や仕上げを変えられるプロダクトとし、lounge Öでは鉄を用いた。今後、異なる環境への展開も想定している。
インテリアの構成要素や特注家具、照明のストラクチャーには、主に木と鉄を用いた。既存建築の力強さに木の温かさを重ねるとともに、細い鉄を家具や照明の構造として用いることで、より繊細で人のスケールに近い構成としている。既存の骨太な構造と軽やかな鉄のストラクチャーを共存させることで、空間に新たなバランスをつくった。また、鉄の磁性を利用し、磁石でものを取り付けたり位置を変えたりできる小さな仕掛けも取り入れている。
家具は、既製品とこの場所のためにデザインしたオリジナルを組み合わせ、形や高さ、座り方の違いによって、それぞれの場所に異なる居心地をつくっている。
地下には、良質な音を楽しむミュージックバーのような空間を設けた。地下駐車場から直接アクセスできる、この建物特有の動線から、スピークイージーのような隠れ家的な場所を着想した。照度を抑え、取り外し可能なパネルによってイベントにも対応できる構成としている。
既存建築の持つ力強さを活かしながら、そこに人が長く過ごすための温かさや居心地を加えること。街に対して開かれた佇まいをつくり、内部ではさまざまな行為や人が緩やかに共存すること。そして、使われることで少しずつ変化していくこと。そうした場所として、lounge Öがこれから変化していく有楽町の街の新たな居場所になればと思っている。