House in Yatsugatake
Site: 長野県
Architect: 芦沢啓治建築設計事務所
Project architect: 芦沢啓治 / 川見憲史
Structural engineer: ASA 鈴木啓
施工: 田中住建株式会社
家具・照明:KARIMOKU CASE / KOKUYO / Santa & Cole
Photo: 見学友宙
標高1,500mの高地、豊かな自然に囲まれた八ヶ岳の高原に建つ別荘の計画である。クライアントは、家族や友人、ゲストが季節を問わず集い、滞在できる場所であると同時に、クライアントが夏の避暑地として長い時間を過ごせる住まいを望んでいた。
敷地は南東に向かって緩やかに傾斜し、周囲には八ヶ岳らしい豊かな森が広がっている。この環境をできる限り生かしながら、北側の道路からの視線を遮り、南側に庭と森へ開かれた場所をつくることから計画を始めた。建物を道路側に寄せ、各居室が庭とつながる平屋とし、ガレージを含む全体のボリュームを緩やかなくの字に折り曲げている。この形によって庭は建築に緩やかに囲まれ、室内からは森の緑と建物が重なり合う風景が生まれている。
平面は、庭に向かって大きく開くLDK、ロフト、ゲストルームを西側に、個室や水回りを東側にまとめ、その間にエントランスを設けた。家族だけで長く滞在するときにも、多くのゲストを迎えるときにも、それぞれが適度な距離を保ちながら過ごすことのできる構成としている。
LDKから廊下にかけては、通常よりも細い材による登り梁を現しとし、木造の架構がつくるリズムをそのまま室内に生かした。軒の高さに合わせて低く抑えた開口部は、庭とその先に続く森をパノラマのように水平に切り取る。一方、ロフトに設けた天窓からは光が室内の奥まで入り込み、時間とともに柔らかな陰影をつくり出す。大きな開口によって単純に自然へ開くのではなく、窓の高さや光の入り方を丁寧に調整することで、森の存在をより身近に感じられる空間を目指した。
浴室と洗面所も、庭や森との関係を大切にしている。透過性のある仕切りによって二つの空間を緩やかにつなぎ、床や壁、浴槽までを同じ石で仕上げることで、ひとつながりの静かな空間とした。浴室の間口いっぱいに設けた木製サッシの先には庭と森が広がり、室内にいながら季節や天候の変化を感じることができる。
ランドスケープでは、敷地に残る既存樹木をできる限り残し、建物と呼応するようにくの字の石積みを設けた。森を新しく作り変えるのではなく、もともとそこにある地形や植生を尊重しながら、人が滞在し、庭で過ごすための場所を加えている。建築とランドスケープを別々に考えるのではなく、その境界を緩やかにすることで、建物が少しずつ森の中に馴染んでいくことを意図した。
八ヶ岳は、自然そのものが強い存在感を持つ場所である。もともとそこにある地形や樹木、光や風を読み取り、それらと建築との関係を丁寧に整えることで、長く滞在するほど周囲の自然を身近に感じられる住まいが望ましいと考えた。四季の移ろいだけでなく、一日の光や天候によって刻々と変化する風景を楽しみ、その変化そのものを暮らしの中で感じられる家になればと考えている。