LOGY
Site: 台湾台北
Architect: 芦沢啓治建築設計事務所
Project architect: 芦沢啓治 / 呉昭彦
施工: Good House Construction Co., Ltd.
タイル:織部製陶(日本) / 三和瓦窯(台湾)
家具:カリモク家具 / Karimoku Case
照明計画: AURORA Inc. / 市川善幾
Photo: 見学友宙
Logyは、台湾の台北のハイテク企業が集まる内湖のビジネスエリアにある現代アジア料理のファインダイニングレストランである。その名称はgeology(地質学)やmeteorology(気象学)などの単語の語尾を由来に“学問”や“理論”を象徴し、日本の「路地(ろじ)」とも響きが似ており、都市の一角に隠れた美食体験を暗示している。レストランではシェフ田原諒悟氏のもと、台湾、日本、アジアの食材を活かしながら、革新を追求する現代アジア料理が提供されている。
ゲストは都市の喧騒と大きなコントラストをもったシンプルな左官の壁に添えられたサインをたよりに、緩やかなカーブのあるLogyのエントランスから入る。そしてレンガで貼られている壁で温かく包まれるような落ち着いたウェイティングルームの空間へと案内される。さらにそのレンガ壁に導かれて進むと、天井が高いダイニングスペースにゲストは迎えられる。全体のカラーパレットは温かみのある赤土色の生地やレンガと茶色のウォールナットを基調とした。それは田原が出す土着的な食材にインスパイアされたものだ。吹き抜け空間を活かしつつ、ゲストにとっての背景となるボリューム感のあるカーテンと木材は、開放感とインティメイトな感覚の共存を表現している。レストランの営業時間は主に夜間であり、静かで優雅な雰囲気を演出し、料理に集中できる没入感のある空間を目指した。
シェフ田原氏の様々な旬の食材を融合する料理哲学から、空間の素材も台湾と日本の建築で広く使用されるレンガを採用し、台湾産と日本産の陶土レンガを組み合わせてそれぞれの土地と文化を感じさせる独自の雰囲気を作り上げている。また、台湾と日本の自然に共通する竹のモチーフを照明デザインに取り入れ、座席の配置には台湾の飲食文化に根付いた円卓スタイルを採用し、家族や友人が集い、食を共有する温かな雰囲気を楽しんでいただけることを考慮している。
ゲストが長い時間心地よく過ごせるように、円卓のテーブルは足元のスペースに余裕があり、このレストランのために体を預けてゆったり会話を楽しめるダイニングチェアをカリモク家具との協働により新しく製作した。各テーブルの竹筒を模した特注の照明は、空間に心地よいリズムを作っており広々とした空間にアクセントとパーソナルな空間を作り出している。
料理が味覚を刺激するように空間もまたゲストの五感に響いていく。料理と空間が互いに作用し合うことで食事の体験に深みが増し、旅行者が台湾を訪れる理由の一つとなって日本と台湾の文化交流の架け橋となることを願っている。