KUFUKU±

2019

日本家屋の既存エレメントを出来るだけ残しながら
デザインをすることに注力したレストラン

秋葉原という都心中心部には珍しい昭和初期に建てられた古民家に、KUFUKU±はある。幾つものレストランを経営しているオーナー夫妻が古民家の雰囲気を気に入り、新たなシェフを迎え、フレンチと和食のフュージョンを提供するレストランを作ることになった。
 
まず初めに建築物の調査、測量から始まり、バーカウンターとキッチンが入る土間空間以外は、できるだけ既存のスペースを活かすこととなった。例えば、蔵の部分は既存を生かしつつ、席を作り、そして空調を足してワインセラーとした。台所の部分は、しつらえをそのままにした。土間空間は、大きくレイアウトを変えるために、構造家の知見を借りて構造補強をしながら大空間とした。
 
最低限の内装を施す上で、我々の考えたことは既存の材料や質感と、新たに加えられた要素との関係であった。素材の美しさ、そして残された意匠に対して、主にスチールワークによる内装とすることで空間に引き締める役割を果たしている。また、大きなイサム・ノグチの照明はどこかコンテンポラリーな雰囲気を作りながらも、空間に馴染んでいる。また佐賀県の家具ブランドであるAriake と、クライアントが持っていたアンティークの家具達によって設られたスペースは、提供される彼らの料理やワインのようにどこか懐かしくモダンである。
 
すでに予約が取りづらいお店となりつつあるKUFUKU±であるが、都心の古民家という財産を多くの人に見てもらうという役わりも果たしている。予約が取れなくても見学は可能だ。もちろんお勧めはぜひランチもしくはディナーを食べ、一定時間そこで過ごすことで、嘗てそこで暮らしていた人々の生活や、町屋建築の豊かさについて思いを巡らすのも一考である。