Azabu Residence

2021

Azabu Residenceは東京西麻布の大通りから一本入ったところにある、1988年に建てられたマンションのリノベーションプロジェクトである。

我々としては同じ棟内における二つ目の物件であり、デベロッパーとも気心が知れていたこともあり、カリモクケーススタディのプロジェクトとして家具デザインも含めたインテリアをデザインすることを提案し了承された。カリモクケーススタディ※1としては4つ目のプロジェクトとなる。今回もカリモクケーススタディのディレクターでもあるNorm Architectsとのコラボレーションとなっている。

昨今の東京では珍しく敷地を贅沢に使い、エントランスエリアの庭もしっかり作り込まれ、落ち着きのある佇まいを持ったマンションである。雰囲気のある薄暗い廊下から抜け、240m2という大きな部屋が我々が手がけた部屋なのだが、小さなバルコニーはあったものの、使える外部空間というほどではないのだが、どこの部屋からも気持ちの良い光が入ることは確認できた。その光の質、マンションが持っている落ち着いたダークトーンの雰囲気、ノームアーキテクツからのインプットであった、アメリカのミッドセンチュリーにおけるインテリアのインスピレーションから、床、壁、そして家具の色味を決定させた。

今までに発表したカリモクケーススタディのプロジェクトと同様に、Azabu Residenceは日本とスカンジナビア、双方のデザインの哲学と美学を組み合わせている。インテリアエレメンツとして天然素材を多く使用しながら、素材の色と落ち着いたカラーパレットをベースにしている。壁や天井は色をコントロールした質感のある漆喰を塗り、椅子やソファーにおけるテキスタイル、カーテン、照明の和紙など手で触れる部分の質感も丁寧に選択しており、木製品との相性を検討を重ねている。

プランニングとしては、既存のプランから大幅に変えて廊下をなくしスペースの連続としている。またそのスペース毎に引き戸が仕込まれて分割できるようにもなっている。そのスペース毎に、壁にニッチスペースなどを設け、花などが飾れるスペースを作っている。和室であれば床間のようなスペースだが、各部屋毎の印象を変え、また空間全体に季節感、柔らかさを作り出している。

Azabu Residenceは、マーケットに出るや否や家具付きで販売された。我々自身も建築事務所が包括的に空間を作っていくことの重要さを改めて知ることになったプロジェクトとなった。